十二ヶ岳と毛無山

                   天子ヶ岳

                  富士山

十二ヶ岳の下りから富士山が見えた

4月16日、Tさんに軽い山歩きが楽しめる山をお願いしていたら、この山行きが決まった。先週から山歩きを再開したばかりで心臓も脚力も不十分だった。Tさんも昨年に比べるとお顔がふっくらとしていた。 デブデブコンビの山歩きは楽なところが良い。道志を抜けるとここは未だ冬景色だった。道路に設置されていた温度計は零度を表示し、対向車の屋根は2cm位雪が積もっていた。

文化洞トンネル

川口湖畔の足和田公民館で8時半の待合わせだった。しかし、時間を過ぎてもTさんが現れない。最終判断の午前6時 、eメールに『雨が上がるので決行しましょう』とメールした筈だが、文言を間違えて、中止と判断されたかと思った。待つ事15分、Tさんが来た。携帯電話は相変わらず電源を入れていないらしい。

9時、登りの文化洞トンネル、下りの根場の駐車場に夫々の車を置いて登りを開始した。登り始めは黄色いアブラチャンの花が咲いていた。先週一回登っただけだが、身体は意外と軽快だった。昨日も磯までの道程を、息もつかないで歩いた。それまでは休みやすみ歩いていた。

アブラチャンから赤松林になった。向かいの山は一部明るくなっていて、天気の回復は早いと思った。十二ヶ岳からは真っ青な湖面と白い富士が広がっている。

『毛無山中腹 熊注意』の看板があった。登りが段々ときつくなる。9時35分、その調度中間地点が、写真上の大岩の場所だった。この坂の松の枯れ葉のないところに足を乗せると滑った。

登りきるとなだらかな道になり、ガスが幾分薄れて右手に湖が見えるような気がした。晴れていれば黄色いアブラチャンの花が映えた筈である。

ゲラの木を突付く音が、静かな森の中に響く。Tさんと耳を澄まし鳥の声を楽しむと猫に似た鳴き声が聞こえた。こんな山の中で野良猫は居ない。ウミネコに対してヤマネコか?と笑った。

10時5分、分岐に到着、木の種類がまた変わった。雨を吸い込んだ広葉樹の枯れ葉は道を赤茶色にした。落葉樹の森は乾いていればもっと白い道になる。

毛無山山頂に近づいたようでササとカヤ混在し、木も少なくなっていた。少し頭の毛が少ない釣るさんを思い出した。 風が強く、木に残った枯れ葉のすれる音が金属音のように聞こえる。

10時30分、頂上には郵便受けが設置してあり、その中にはノートがあり登った人々の記録が書かれていた。また、登山計画書も入れてあったが、これは後で思ったが登山届けだったのかもしれない。今問題の個人情報がバッチリと書かれていた。

この山は雑誌”岳人”に記載され、花を楽しめると書いてあったが、その花がなんだったか二人とも忘れていた。早い朝食だったのでお腹が空いていた。煎餅を二人で分けて出発した。『これからアップダウンが続き十二ヶ岳に至ります』と事もなげにTさんが言った。ツツジの木があり、これがここのお進めだと気付いたが未だ冬芽のままである。

少し下ると、見上げるように急な登りになった。もうこの辺りで体力が無くなっていた。10時45分、登りきると『一ヶ岳』と書かれて、十二ヶ岳の意味と、これからの厳しい行程が想像できた 。

10時55分三ヶ岳到着。四ヶ岳を過ぎた頃には歩くのも嫌になった。でも戻るにもまたアップダウンを繰り返さなければならない。後何ヶ岳と数え始めた。

10時59分少し楽な道になったと思った。 しかし、ここからロープの下りが所々にあった。
11時11分、六ヶ岳に到着した。やっと半分である。 11時18分、七ヶ岳からは危険な為か頂上を巻く道になった。

ここから落葉広葉樹の森になった。11時25分八ヶ岳に到着した。

登り下りのロープが段々と長くなってきた。

11時33分、十ヶ岳に到着した。十一ヶ岳は下りになった。先を行くグループの声が水平方向から聞こえてくる。ガスって先は何も見えない。『落石』、『登りきるまで待って』 等と緊張した声が聞こえる。彼らがどんな斜面を登っているか容易に予測できた。

十一ヶ岳の下りで同じように、苦労していたからである。浮石が多く、30m位の下りは先を行くTさんに危険が及んだ。彼が安全な場所まで下るのを待った。12時、下りきると吊橋になった。アルミの板は滑りそうで、左右のロープが頼りだった。

十一ヶ岳下り

橋を渡った先はゴジラの背中をよじ登る感じだった。ここは左右が切れ落ちていて、落ちればもちろんーーーーー。少し登るとまた左右が切れ落ちて細い背になった。先を行く人たちはここら辺りで大きな声を出していたのかもしれない。ガスで先が見えない。下った分は既に登り返した筈だが 、目指す十二ヶ岳に着かない。先を行くTさんが、何度も『後20mで頂上のようです』と繰り返す。 二回目からは信用しなかった。工程はこの先の鬼カ岳(1738m)までだったが、既に体力は空っぽ状態だったので、エスケープする事にした。

12時35分分岐に到着した。十二ヶ岳頂上はもう目の前である。 Tさんが持ってきた日本酒で乾杯をし、昼食を取った。十二ヶ岳の先から先を行くグループの緊張した声がまた聞こえる。中止を決めてよかったと思った。

その声は食事が終わる頃まで続いた。13時20分、食後のコーヒーを飲んでいるとガスが取れてきた。早速今登って来た十一ヶ岳の方に戻ってみた。すると遙か下に十一ヶ岳の頂が見えた。毛無山からここまでをトレースする。

アルミの橋
木立の間から山中湖が見え、その先に町並みが見えた。 食後、13時40分に十二ヶ岳の頂上に着いた。祠が二つあった。
その先、富士山が見えるはずだが裾野しか見えない。 西湖は波もなく静かな湖面だった。

13時45分西湖に下り始める。このルートも斜面が急でロープが点在した。

14時5分小ピークを右に巻くと、苦しめられた十二ヶ岳の峰々が見えなくなり、ガスが取れ正面に富士山が見えた。

ブナが点在

十二ヶ岳西尾根

14時10分、ブナとササの植生地に着くと、道はなだらかになった。左に十二ヶ岳が見えたが、その姿に頷いた。尾根は十一ヶ岳から一旦ズバリと落ちて、鋭角に頂上に向う。そしてこちらから見える山の斜面は岩が垂直に立ち上がっている。

暫く下った14時35分、辺りはまた松の木が点在する。右手に十二ヶ岳の西尾根が見えた。やはりここも急峻な山で、絶壁の岩肌が大きく露出していた。改めて、下山を選んだ事に納得するデブデブコンビだった。

十二ヶ岳の峰々

文化洞トンネル

15時、文化洞トンネル方向の分岐に到着した。それから旧根場通学路を進んだ。こんな寂しい道を子供達は毎日歩いていたかと思うと、今の社会からは驚きだった。 安全は何で確保されるのだろうか。”整備されているから安全”ではないようである。

林を抜けて舗装された道路に出る。左右の集落は人の住んで居ない家が多い。冬の厳しさは我々の想像以上かもしれない。 そして生活の不便さは、歴史や伝統を段々と追いやってしまう。15時40分、ふさがれたトンネルに到着した。この下が文化洞トンネルだ。

疲れきった私は、Tサンに『ここハイキングコースではないよね』と嫌味っぽく言った。彼も頷いた。 道志の道を走ると満開の桜とツバキの花が咲いていた。

【実績】

文化洞トンネル9時〜分岐10時5分〜毛無山10時半  1.5h

毛無山10時半〜十二ヶ岳キレット12時       1.5h

十二ヶ岳キレット12時〜十二ヶ岳分岐12時半     0.5h

十二ヶ岳13時40分〜文化洞トンネル15時40分      2.0h

    計   5.5h

【Tさんの計画】

登山口〜毛無山(1500m)     1.5h

 毛無山〜十二カ岳コル(1680m)  1.5h

十二カ岳コル〜金山(1686m)    0.5h

 金山〜鬼カ岳(1738m)      0.5h

 鬼カ岳〜雪頭カ岳〜根場民宿    1.5h 計   5.5h